
演出と音の濁流に飲まれる心地よい感覚
ボカロP・DJとして活動する「きくお」さんによるVRChatワールド。
長年きくお楽曲に触れてきたこともあり、VRChat復帰後、最初に訪れたいと思っていたパーティクルライブでした。
不穏さと美しさが混ざり合う独特の音楽世界を、VR空間へそのまま落とし込んだような体験が広がっています。
今回の記事は、きくおファンによる早口オタク感想文がかなり入っています。セットリストも公開して体験したことをそのまま文面に起こしているため、予備知識ゼロで楽しみたい方への配慮が行き届いておりません。そのことを了承して読んで頂く必要があります。
星くんが誘うKikuo音楽体験世界。この夜をこえよう。 高揚し、入り込み、溶かし、振り返り、ぐちゃぐちゃになりながら、 何度でもこの夜をこえよう。
- 制作者
- VR_SMEJ
- 最大人数
- 32名
- 公開日
- 2024年10月14日
- 所要時間
- 約15分
多くの人に影響を与えた狂気の宴
「きくお」さんについて
きくおさんは独自の音楽性で世界的に評価されており、ボカロ史上初のワールドツアーを開催したことでも知られています。
『しかばねの踊り』『愛して愛して愛して』など、強烈な印象を残す楽曲を数多く生み出しており、不穏さと美しさが同居する独特の世界観は、他ではなかなか味わえません。ざっくり分かりやすく例えるのであれば、音楽で聴く人の脳みそをこねるのが上手な方です。
「よるとうげ」の世界観

このワールド最大の魅力は、きくお楽曲が持つ「胸を締め付けるような情動」や、「思考を捻じ曲げるような音の圧」を、パーティクル演出によって全身で浴びられることです。
単なるライブ再生ではなく、音楽の世界観そのものに入り込む、というよりは取り込まれる感覚に近い構成です。
実際に体験すると分かるのですが、自分自身もこのワールドの演出のひとつとなります。本当に心臓を掴まれるような緊張感と没入感でした。音と映像のシンクロ精度が高く、VR空間ならではの体験として完成度の高さを感じました。
ライブ会場までの道のり
入場後、穴に落ちたあと彩度のない空間に落とされます。
半透明の子供をなでなでしたあと(VRChatterの習性)、彼らの進行方向を追ってトンネルを潜ると、真っ暗な空間に。
天井の高いその暗い空間はライブ会場だと気づきます。
空間の真ん中に配置されているスイッチを押すと、カウントダウンの音が響き始めます。30秒サイリウムを持って待機。
この時点では、まだ「普通のパーティクルライブ」だと思っていました。


世界観に飲み込まれる体験
1曲目『闇祭』
突如、目の前に現れる星くん。
お手々くるくる回してカワイイね。
星くんは、きくおさんの公式マスコットキャラクターで、2012年のボーカロイド曲「そして君が月になった」で生まれ、人気となりました。
「よるとうげ」ではそんな星くんを中心としてライブが展開されます。ファン歓喜。サイリウムぶんぶんです。
1曲目は『闇祭』。スクリーンに映る演出を、眺めるライブなのかと思っていました。
強烈なパーティクルをイメージしていたのですが、思ったよりとても大人しいな、んん?

急にめっちゃわらわら出てきた。
それまで背後のスクリーンだったものから、飛び出してくる触手状のエフェクト。
びっくりして思わず避けましたが、避けなくて大丈夫です。
ですがこの演出は、まだ序盤に過ぎず、楽曲が進むにつれ、空間そのものが徐々に狂気へ染まっていきます。
様子がおかしい(悦びの声)
1曲目『闇祭』の音楽から、じわじわと侵食するように2曲目のイントロが聞こえ始めます。
この曲は『てんしょう しょうてんしょう』だ!
2曲目『てんしょう しょうてんしょう』
「ぼくの番」という声とともに演出は更に激しいものとなります。
このとき、あまりの迫力と期待から、全身の鳥肌がブワッと立ち上がります。

激しさを増すパーティクル演出。この脳みそをぐちゃぐちゃされる感覚が心地良い。
きくおさんをご存知の方でしたら「愛して愛して愛して」のMVの激しさを思い浮かべて頂ければ想像しやすいかと思われます。
そしてこのパーティクル演出は「ワールド」だけに留まりません。
3曲目『わたあめ』
スッと曲の勢いが収まり、静かで不穏な曲調に変わります。
3曲目「わたあめ」のようです。
かわいいタイトルですが全然曲調は可愛くないです。原曲も、精神にダメージを追わせる程度には不穏な曲調で、耳から不安定の煮凝りを流し込まれている感覚になります。なお、これはすべて褒め言葉です。
VRで更にその曲を体感できるとは思いませんでした。地獄の舞台を生み出すのが上手なワールド。
違和を感じ、自分の手や同行していた友人の姿を確認すると、人間の形を模した帯状のナニかになっている。
ここで、いつの間にか自分たち自身も演出の一部になっていることに気付きます。
手の量だけカニっぽい謎のナニかに場を操られながら、帯状になった人間たちは吸い込まれていく。そして自分もその中のひとり。
視界だけ置いてかれて自分の体は持っていかれてしまいました。
からっぽでも、皆ぐちゃぐちゃぎゅうぎゅう詰めでヒトツになったら安心できるよね、と歌詞からイメージされる圧。


4曲目『ようこそ星のお宿』
スッと場面は代わり、星くんに先導される形で足場が移動していく。
みんながひとつにされたあと連れて行かれたのは精肉工場。4曲目「ようこそ星のお宿」の舞台です。
曲のテーマをざっくり言うと「黄泉の国へ誘う歌」です。なるほど、先ほど無理心中させられた可能性が高まりましたね。
精肉工場でミンチにされるという、VRじゃないと嫌すぎる貴重な体験をして美味しく仕上がったところで、来場者ミンチ肉の出荷よ~。
更に場所は移り、巨人が闊歩する広い空間へ。歌詞に当てはめるとしたら、ここは黄泉の国なのでしょう。急に開けた視界に感動しつつも、この先に進み続けて大丈夫なのかと不安にもなります。


5曲目『カラカラカラのカラ』
足場は加速し、5曲目「カラカラカラのカラ」へ。
かなり頭の中が騒がしくなる曲なのですが、歌に連動するようにパーティクルの演出も暴走を始めます。
途中、視覚がおかしくなりそうなぐらいのオブジェクトが飛び交い、曲に飲まれてパンクしそうです。
目の前の星くんの動きも、激しく動いていている。く、苦しい…かわいい…。

夢から覚めたようなライブの終幕
濁流のように音と演出に流されていると、スッと場面は切り替わる。
気が付けばライブは終わっていて、静かな極彩色の海辺に取り残されていました。
さっきまで頭を埋め尽くしていた音と映像の濁流が嘘のようで、現実感が戻りませんでした。
夢でも見ていたのかと、しばらく周囲を見渡してしまいました。
おわ、おわ…り?やだやだ、捨てないで。
何度も通いたくなる中毒性の高いワールド
終了後のクレジットを見てみると、ゲームのMOD制作で知られるtktkさんが制作に携わっていたことを知り、非常に胸が熱くなりました。個人的に交流もさせて頂いていたので、こんな素敵なワールドの制作陣のひとりだったのかと分かると尚更嬉しくなりますね。
とにかく脳に焼き付くインパクトがあるワールドなので、ファンはもちろん、きくおさんの楽曲に初めて触れる人にとっても、世界観の入口としておすすめできます。このとき同行してくれたVRChat初心者のキケロにも、VRならではの没入体験を共有できたことは喜ばしいことです。
パーティクルライブは通常、一度観たら満足する場合が多いのですが、私個人としては「よるとうげ」ではそうではありません。何度も足を運んでしまう中毒性の高さがあります。
音楽を「聴く」というより、「飲み込まれる」。
そんなVRならではの没入感を味わいたい人には、ぜひ一度体験してほしいワールドです。
