
執着するのは報復か命か、選択肢で決まるゲームブック風RPG
長い間アーリーアクセスだったゲームブック風RPG『いのちのつかいかた』が、いつの間にか正式リリースされていたのでプレイ。ゲームの特徴としては、「コマンド式」「ゲームブック」「TRPG」「シビア回避アクション」を混ぜたようなゲームだ。
全実績解除まで楽しんだので、色々書いていこう。今回はゲーム概要及びプレイ所見・感想である。
『いのちのつかいかた』はゲームブック風マルチエンディングRPGです。プレイヤーの選択によって「執着」が変動し、旅を通して決めた「いのちのつかいかた」で結末が変わります。
- 開発元
- だらねこげーむず
- 販売元
- PLAYISM
- リリース日
- 2025年11月26日
- 対応機種
- PC(Steam)
物語のあらすじ
とある兎人のゴーシュが主人公。
迷惑ドラゴンに村を襲撃され、主人公を残して全滅する。最初から描写もエグいし被害規模がデカい。
ここで主人公は不思議な“恨みの力”を手にするところからスタート。
“恨みの力”が命を蝕んでいく中、力を求めるのか、何をするにもまず生きていくことを優先するのか――
“いのちのつかいかた”を決めなければならない時が、やがて訪れる。
ゲームシステム
QTEバトルシステム
このゲームについて好評不評を分ける時、一番語られるのがこのQTEシステムだろう。
QTEというと、ゲームに出てくる邪魔なものというイメージが強い。
だが、『いのちのつかいかた』においてはそういう要素ではない。
生き残れるかは全て自分の反射神経次第となる。
敵の攻撃時に回避タイミングに合わせて上下左右のどれかのキーをちゃんと押せたら回避できますよ、というシステムでしかない。
要するに、ジャストガードやジャスト回避をコマンド式RPGでやるという話だ。
上段への攻撃は、下を押してしゃがんで避ける。
中段の攻撃は、左でステップして回避する。
下段への攻撃は、上でジャンプして回避する。
さらにダメージを受けるがどこを狙っていようと、右を押して剣でガードする。
このタイミングが難易度次第ではかなりシビアで、ひりつく戦闘が楽しめる。


これはストーリー的にも合っており、力に秀でているわけではない兎人が、素早く敵を翻弄して戦うスタイルをちゃんと表現できている。
常にギリギリの戦いになるため、“いのちのつかいかた”というテーマにも説得力が生まれているな、と感じた。
ただ、かなりの集中力を要するので眼精疲労でプレイヤーも蝕まれていく。
それでも男は黙ってハードモードを選択。これが俺のいのちのつかいかただ。なお眼は死ぬ。
とはいえ、不評と言いたい理由もわかる。
この「タイミングを合わせる」というのが作業に感じられる場合は嫌だと感じるだろうし、苦手な人は本当にクリアできないと思う。
おそらく「3択を見てから押す」では間に合わないのが大きいのだと思う。
ジャスト回避以外だとゴリゴリ削られるし、ボスの攻撃は3発かすったらもう危ない、みたいなのもある。sekiroみたいな感じ。
それくらいシビアな戦闘なのだが、個人的にはこれが楽しくてしょうがなかった。
コマンド式RPGだから反射神経いらないと思った? 残念、いるんだ。

難易度設定はかなり細かく、イージー/ノーマル/ハードだけでなく敵のステータスをさらに上げ下げできる。
敵能力を最低まで下げると、とりあえず雑に右を押してジャストでもないガードをしているだけでクリアまでいけるので、どうしてもクリアできない人は試してみよう。
ハードモードのシビアさが欲しいけどすぐやられるのは嫌なので攻撃力だけ下げるという設定だってできる。
ストアページにも下記の記載がある。
人によって好みの分かれる戦闘システムがあるため、購入前に体験版のプレイを推奨しています。
体験版のセーブデータは製品版へ引継ぎ可能です。
回避システムに対する不評が多かったから追加された説明だと思うが、合わない人には本当に合わないので、体験版はちゃんとやっておいた方がいい。町の近くでレベル上げしてボタン連打でクリアしていくRPGではない。
ただこのゲームはこれでいいと思う。
作者が作りたい戦闘システムであり、自分の趣味に合う人にやってほしいんだなというのがわかる。
なのでQTEなんていれたら万人受けしないからやめなよ、という論調はあまり意味がなくて、
これは合わねえ~!Not for me!というのはなんぼでも言っていい。
激辛カレーの店ですよというのに思った以上に辛くて無理だったというのが認知されれば逆に辛いもの好きが寄ってくるみたいな宣伝効果にもなるだろうというケースかなと思う。
スキルの組み合わせとステータスの割り振りにより戦闘のプレイフィールが変わる
スキルポイントを消費して4つのクラスを伸ばし、2つのクラスを伸ばし切ると、それらを組み合わせた上級クラスを解放できる。
4つの上級クラスで周回した4周すべてを違った戦略性で楽しめた。
さらに、ステータスもポイントの範囲内で自由に伸ばせる。
とはいえ、選択肢が無限にあるタイプではなく、「やりたい上級クラスに合わせて伸ばす」が基本。
ビルドのリセットも可能なので、致命的な振り間違いはカバーできる。

クラスに対応したステータスを伸ばしていけばいいのだが、どのクラスでも防御面に影響するVITや、回避難易度に直結するSPDにどこまで振るかが悩ましい。
どれくらいポイントを振ればどれだけ変化するのかは、やってみないとわからない。
クラス選択も先を見据えて想像で進めていくしかない。
ただ、この辺はゲーム慣れしていれば特に問題ないと思う。
ノーマルではSTR or INTとTECを伸ばし、「回避予測を確保しつつガンガンいこうぜ」くらいのノリで進めていた。
だがハードになると、SPDとTECを伸ばし、端数を火力へ回し、「いかに避けてチクチク削るか」というプレイスタイルになる。
気づいたらSPDに怯えるゲームになる。
ハードだとVITなんて最低限で捨てる。避ければノーダメの精神である。
今のターンをどう乗り切るか。
どこまで火力を出しつつ準備して、次のバーストへ繋げるか。
次ターンのスキル選択をどう組み立てるか。
そういった「読み」と、「自分の回避を信じられるか」という行動選択が楽しい。
また、進行に合わせてどの程度スキルが解放され、どこまで能力を伸ばせるかのレベルデザインもしっかりしている。
次の成長で新しいスキルが解放され、戦い方の選択肢が増える。
これが進行へのモチベーションにもなっており、バランスはかなり良い。
ゲームブック風な描写や演出
「さて、この状況でどうしますか?」という選択によって展開が変わる仕組みになっている。
例えば、「気づかれないよう静かに進む」でも「正面突破する」でも、結果的に先へ進めたりアイテムが手に入ったりする点は同じ。
“どう突破したいか”でアプローチが変わるだけ。
選択によって大きな不利益になるようなことはないためロールプレイに合わせた進行でかまわない。
選択肢を選ぶ際も、こういう気持ちを持ってますよという補足説明が入るため、あれ?思ったんとちゃうかった。ということにならない設計。
選んだ結果どちらの執着が強まるかも教えてくれるので思うようなロールプレイができる点も親切だと感じる。
また、マップ上の探索ポイントも、行ける範囲ならどこから調べてもいい。
「この場所は後回しにして、先に他を探索しよう」みたいな動きもできる。
ある探索ポイントで見つけたものや行動が、別の探索ポイントで有利な選択肢を出したり、状況を改善・悪化させたりすることもある。
ゲームブックっぽく、「君はどうする?」と語りかけてくるナレーションの雰囲気も良い。
「さて、これは主人公ゴーシュとしての君の選択だよ」と、淡々と進んでいく。
TRPGのようなダイス判定によるアクシデント解決
選択肢の中には、成否判定を求められるものがある。
これはゴーシュのステータスによって成功率が変動する。
こそこそ動く場面ではSPDを参照したり、厳しい環境下で先へ進めるかをVITで判定したり、といった具合だ。
単純に要求値を満たせばいいわけではなく、ダイスが絡んでくるので、ただの探索イベントでもダレにくい。
探索イベント自体は読み物なのだが、ゲームブック風の探索とTRPG風ダイス要素が噛み合っており、成功しても失敗しても楽しい。
失敗しても「進行不能」や「重要アイテム取り逃し」みたいな致命的なものではない。
ただし、ダイスは空気を読まない。
「ここで失敗する!?」みたいな事故も普通に起こる。
例えば、「崖から落ちそうになっても、まあなんやかんや助かるイベントでしょ」と思っていると、急にダイス判定が始まる。
いや待って、この状況で成否判定あるの?
結果としては無事なんとかなるかダメージを受けるがなんとなかったとかになる。
この危険な目には遭うものの、「なんとか負傷程度で済んだ」というハラハラ感に繋がる。
ゲーム的にはペナルティでも、物語としては良いスパイスになっている。
ルート分岐によりまったく違う展開の2つのストーリー、4つのエンディング
全てを失った状態から復讐をするにも生きていくにも、まずは目先のことから始まる。
命に執着するか、力に執着するかでストーリーは変わる。
ただ、これは単純な二元論ではない。
最初のうちは、「命か力か」の排他的な話ではなく、「今どちらを優先するか」という積み重ねになっている。
様々な選択肢によって両方の執着が上下し、最終的に“結論を出さなければならない時”が来た時、一番執着しているものを選ぶことになる。
最初はこう思っていたけどだんだんこういう思考になるな~というのなら変わっていくこともあるだろう。
1章終了時に分岐して2種類の異なるストーリーが展開される。
そして、その旅の中で積み重ねた選択によって決まる4種類のエンディング。
是非全部見てほしい。
分岐条件についてはゆるいし一度プレイすれば理解できるので初見は自由な選択でエンディングまで進むといい。
どのルートが効率的とかそういうのはない。
また、“いのち”がテーマなので基本的にはかなりシリアスで、人死にもバンバン出る。
だが、普段のゴーシュはかなり気さくでコミカルだ。



シリアスな場面では殺伐としていても、旅の仲間や出会った人々との会話では、本来のコミカルさがちゃんと出る。
こういうゲームって、たまに寒いギャグや下ネタを挟んで空気を壊してくることがあるのだが、本作はそこまで悪ノリしない。
納得感のあるコミカルさに収まっている。
BGMの雰囲気が良い
雰囲気にあったBGMがストーリーにマッチしておりとても良い。
ボス戦の盛り上げ方も出来が良く心地よいゲーム体験に繋がっていたと感じる。
なお、BGMに関しては残念ながらサウンドトラックは出ないようだ。
素材集の曲を使用しているシーンも多いため権利上難しいのが理由である。
プレイしていて感じたことの雑記
初周は8時間ほどかかった。
ただ、メッセージの超速早送りもあるので周回プレイはかなり快適。
実際、戦闘だけを考えれば1周にかかる時間はそこまで長くない。
戦闘を楽しみたいならハードで周回。
エンディング回収したいなら最弱設定で周回。
この辺を自由に選べるので、4周前提なら周回のストレスはそこまでない。
マップで迷うこともなく、成長導線も見たり読んだりすればちゃんと理解できる親切設計。
ヘルプを見るだけで、大体のシステムは把握できる。
気になる点としては、詠唱スキルの演出が毎回ちょっと長い。
魔剣士はそこそこ程度だが、賢者は火力を出すために詠唱演出が頻繁に挟まるので、ややテンポが損なわれる感じがあった。
あとセーブ周り。
やり直しがきかないタイプなのでコンセプトとしては理解できるのだが、「特定ボスに別ビルドで再戦したい」「特定イベントを見たいからやり直す」となると、ニューゲームからとなるため大変。
まあ、そういうゲーム性なのは理解してる。
理解はしてるけど、なんとかラスボス再戦が手軽にできねえかなとは思う。
総評
単純な確率のやり取りではなく、プレイヤースキルに大きく左右される回避システムがとにかく楽しい。
回避だけでなくシンプルなコマンドバトルの中にちゃんと戦略性が詰まっている。
「行動の組み立て」と「反射」の両方を要求されるため、かなり歯ごたえがある。
ストーリーも、「いやそうはならんやろ」と感じるような強引さがなく、納得感のあるファンタジー作品として綺麗にまとまっている。
回避に脳を焼かれながら眼精疲労と闘いながら周回していた。
ヘビーなゲーマーには、個人的にかなりおすすめな作品である。